2024/4/28 週報メッセージ

「見張りの役目」  イザヤ62:6

川﨑 信二

戦争はいったん始めてしまうとこんなふうになる。ロシアとウクライナ、イスラエルと中東情勢。心を痛める報復連鎖のスパイラルだ。

戦争を長引かせる要因の一つに徴兵制がある。イスラエル政府はハマスやイランの攻撃に対応できるよう兵員不足を補うべく徴兵期間の延長を法案化したい考えのようだが、戦争悪化に拍車がかかる事案として懸念される。

国民の間で問題視されているのは徴兵の不平等である。今までもそうだったが、ユダヤ教超正統派の若者は徴兵免除とされてきたが、今後も免除されるかどうか。

これが国民の不満を高めている。イスラエルは予備兵役を入れると国民のほとんどが兵士となる。国民的義務を担おうとせず、仮に徴兵が認められたら、超正統派政党が連立離脱に走る構えだ、という。

 「祈り」に専念する宗教家が、宗教ゆえに免れてきた兵役義務だが、他の若者が戦争へ行くことには賛成しているのに、いざ自分たちにも火の粉が飛んできたら政府に圧力をかけるのだろうか。そもそも、平和を祈るべき彼らが戦争勃発前にそれを止めるのが役目だったのではないか。

ロシア正教の総主教がプーチン大統領の戦略を祝福したことは知られているが、かつての日本基督教団も戦争加担の道を歩んだ過去がある。権力に屈した過去がある。宗教の役割は何だろう。宗教が権力を持つことは恐ろしい事だが有事には国体の過ちを全力で阻止する気概が期待される。戦争よってどれだけの人的財産が奪われることか。始まってからでは遅いと感じる。

 私の伯父は戦前に神学校に入学したが学徒出陣で応召されシベリア抑留で辛酸を嘗める経験をした。戦後3年して復員し、再度神学校で学び牧師となった。学生を送り出す時点で既に勝敗は決まっていた。けれど一度始めた戦争はどちらかが敗北し甚大な損失を被らない限りは終わらない。

預言者の「見張り」の役目とはどんな意味なのだろう。最初は戦争に賛成し、自分たちにも危害が及ぶと分れば反対に転じるのでは遅すぎる。平和のためにキリスト者には何ができるのか。ただただ祈らされるばかりだ。